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フィンランドの森便り7月 その2 ベリーとキノコ

7月からはいよいよ野生のベリー摘みとキノコ狩りのシーズンが始まります。この時期に代表的な野生のベリー類は、森のブルーベリー(ビルベリー)、フサスグリとラズベリー、湿原に生えるクラウドベリー(ホロムイイチゴ)です。森のキノコの中でもアンズに似た香りのするアンズタケの収穫量がこの時期には多く、街の青空市場にもこの橙黄色のキノコがたくさん出回ります。露地栽培のカラフルなフサスグリとマルスグリ、ラズベリー、そして国産の新鮮なイチゴも青空市場に出回ります。

フサスグリ、ラズベリー、露地栽培のイチゴ、野生のブルーベリー

露地栽培や野生のベリー

露地栽培のイチゴ

露地栽培のイチゴ

野生のブルーベリー

野生のブルーベリー

露地栽培のマルスグリ

露地栽培のマルスグリ

露地栽培のクロフサスグリ

露地栽培のクロフサスグリ

露地栽培のラズベリー

露地栽培のラズベリー

野生キノコ、アンズタケ

野生キノコ、アンズタケ

フィンランドでは、他の北欧諸国同様、この季節にザリガニを賞味します。7月21日正午になると全国一斉にザリガニ漁が解禁になり、10月下旬までほぼ3ヵ月半続きます。国内の湖沼・河川には在来種のザリガニと放流された外来種のアメリカザリガニの2種類が生息しています。しかしながら、一般的に人気があるのはたとえ値段が高くとも甲殻が軟らかく、味も良いとされる在来種です。旬はやはり8月以降で、青空市場や屋内マーケットには生きたザリガニが並びます。特に田舎では、人々は山盛りのザリガニを囲んで恒例のザリガニパーティを開きます。街中のレストランの一部にも期間限定のメニューとしてザリガニ料理が登場します。調理法はいたって簡単で、塩とセリ科のディルと呼ばれるハーブでシンプルに味付けします。お湯をぐらぐら煮立てて、前もって泥抜きしたザリガニを生きたまま放り込みます。半日ほど冷やしてから頂きますが、真っ赤に茹で上がったザリガニは見た目にも食欲を誘います。

花と森歩きの達 人 宮澤豊宏さんと歩くフィンランド花と森のハイキング

フィンランドの森便り7月 その1

7月は一年で最も平均気温の高い月、真っ青に澄み切った空に太陽が燦燦と輝きます。日中の最高気温が30℃を超えることも中南部では時々あります。それでも朝晩や夜間は普通20℃以下に下がるので非常に快適な陽気です。午後から夕方にかけては入道雲や雷雲が突如発生し、局地的な雨に見舞われることもあります。

7月初旬からはヤナギランが道路脇の土手、空地、山火事・伐採跡地に大きな群落を作り、一面に美しい紅紫色、時には白色の花を咲かせます。夏至も過ぎて夏もたけなわとなると、お花畑は森林から日当たりの良い草原や湖沼などに中心舞台を移します。ヤグルマギクの仲間、アザミの仲間、ワスレナグサ、ヒメオドリコソウ、マーガレット、カモミール、ヒルガオ科の仲間、ナデシコ科の各種植物、キバナノレンリソウなどが空地や野原にごく普通に見られます。

赤紫色の花で野原一面に咲き乱れるヤナギランの群落

赤紫色の花で野原一面に咲き乱れるヤナギランの群落

キキョウ科ホタルブクロ属のカンパニュラの仲間は、フィンランド国内では約10種類が知られ、花色は青紫色、紫色、空色が普通ですが、中には白色のものもあります。また同じ頃、湖沼、水湿地、水辺にはスイレンやコウホネの仲間の花が水面をいろどり、浅瀬や小川にはミクリ、サジオモダカ、キショウブ、ガマなどが、川端にはエゾミソハギ、クサレダマなどが生えています。

清楚な雰囲気を漂わせる白花のスイレン

清楚な雰囲気を漂わせる白花のスイレン

比較的明るい樹林の下には茎を長く地をはわせるリンネソウが咲いています。スウェーデンの植物学者、リンネに因んで命名されたリンネソウは、茎の先にほのかな香りのする帯桃白色の可愛らしい花を下向きに1対つけます。さらにママコナの仲間は半寄生植物で、クリーム、もしくは紅紫色の花を咲かせます。また、山伏の持つ錫杖に似ていることから名付けられた腐生植物のシャクジョウソウは、木漏れ日のあたる針葉樹の林内に生えています。

フィンランドの最高のもてなし、湖畔のサウナ

フィンランドの最高のもてなし、湖畔のサウナ

フィンランドでは、6月下旬の夏至祭の頃から8月上旬までの時期が夏のバカンスのシーズンです。人々は毎年この時期に4週間程度まとめて夏期休暇を取ります。中にはテレビに齧り付いている人もいますが、家族でサウナ付きの夏の別荘に滞在するのが典型的なフィンランド・スタイルの夏の過ごし方です。自分で所有していなければ、貸し別荘や親戚・友達の別荘を利用することもあります。昔と違って、最近では別荘でも人々が快適な生活を求めるため、全国に48万戸近くあるといわれる別荘の設備は年ごとに充実してきています。

花と森歩きの達人 宮澤豊宏さんと歩くフィンランド花と森のハイキング

今年8月にフィンランドへマツタケ狩りに出かけましょう

森の民族であるフィンランド人はヨーロッパでもキノコ好きの民族として知られています。豊かな森林資源に恵まれているフィンランドには春から晩秋になるまで様々なキノコが生えます。フィンランド人は伝統的に森林や湿原においてベリー摘みとともにキノコ狩りを楽しみます。しかしながら、国産のマツタケについてはこれまでほとんど注意が払われてきませんでした。

フィンランド産マツタケ

ところが2007年からフィンランド人のマツタケに対する評価が一転して、大変貴重なキノコとして崇められるようになってきました。国立食品安全管理局が同年4月にマツタケを国内で商業上取引してよい食用キノコのリストに加えたこと、それに先立ってアークティック・フレーバーズ協会がマツタケを2007年のきのことして選び、キャンペーン用の絵葉書とパンフレットを作成し、配布することによって国内におけるマツタケの知名度を格段に高めたことが影響しています。同年9月下旬には中部フィンランドのキヒニオで国立森林総合研究所が3日間にわたってマツタケ・セミナーを開催しました。国内のほかに、日本、スウェーデンからも専門家を呼んで、活発な討論が行われました。国内のマスコミでも機会あるごとにマツタケが採り上げられていました。こうした追い風に乗って、フィンランド産マツタケの日本向け輸出もここ数年本格化してきました。

赤松の生えるフィンランドの森にはマツタケが・・・

フィンランド産マツタケの学名は、少し前までTricholoma nauseosumが使われていましたが、最近ではTricholoma matsutakeに変更されています。スウェーデンではDNAレベルで北欧産と日本産のマツタケを比較したところ、全く差は見つかりませんでした。基本的には、フィンランド産とスウェーデン産は同じものですから、正真正銘のマツタケと言っても過言ではありません。本来ならば先に命名されたTricholoma nauseosumを採用する決まりでしたが、なにせ吐き気を催させるようなという意味があり受けが悪いので、特例として後から命名されたmatsutakeの方に軍配が上がりました。

?中部フィンランドのマツタケの森

フィンランド語でマツタケのことをmännyntuoksuvalmuska(マンニュン・トゥオクス・ヴァルムスカ)と言います。直訳しますと、マツ林に生える匂いキシメジ科キシメジ属のキノコとなります。こちらのマツタケはほぼ全国的に分布していますが、収穫量は北部に行くに従って増加する傾向があります。瘠せた、乾燥性の土壌で、欧州アカマツ林内に普通8月から9月にかけて発生し、典型的な地表植生はハナゴケ類、タチハイゴケ、カルーナ、コケモモなどです。当地では、マツタケの香りのことを、ヒヤシンスの匂いに近いとか、甘い良い香りとか表現しています。フィンランドで出版されているキノコの図鑑には、マツタケは非常に美味な食用キノコとして記載されています。

ウォーッ!マツタケ発見?

さて今年8月下旬に企画されているハイキングツアーでは、イカーリネン、セイツェミネン、アウランコ、ヌークシオといった中南部の4ヶ所で、トレッキングと森の散策をたっぷりお楽しみいただくことができます。スパホテルのあるイカーリネン周辺の森ではキノコやベリーを収穫した後、外国にいながらにしてマツタケパーティーを開くことも夢ではありません。森林と湿原、そして氷河地形のエスカーがモザイク状に入り組んでいるセイツェミネン国立公園では原生林に近い森林も残されています。国設アウランコ森林公園は総合リゾート地内にあり、季節ごとに移り変わる草花とともに展望タワーからはまさに典型的な森と湖の景色を満喫できます。首都圏に最も近いヌークシオは国内の国立公園の中でも三指に入るほどの人気スポットで、思いのほか地形の変化に富んでいます。

?やったぁ、マツタケ収穫♪

このほかに、シベリウスの生家やハメ城のあるハメーンリンナの市内観光、そして躍動的な首都ヘルシンキの市内観光、さらにご希望に応じてイカーリネンスパホテルで提供される各種トリートメントサービスなど、とても魅力にあふれた内容です。

花と森歩きの達人 宮澤豊宏さんと歩くフィンランド花と森のハイキング

マツタケ狩りとハメ地方周遊7日間